38,000フィート越えの父上様へ
奈々(沖縄県 31 歳)
久しぶりに手紙を書くね。いつぶりの手紙じゃろうか。おかげさまで、私は相変わらず、元気で自由な生活をしちょるよ。
最近、岩国の家から「昭和の再建で使われていた釘2本」と「記念書き込み整理券」を見つけたって、連絡もらったんよ。とても錆びてはいるけれど、ちゃんと形として残っていた、曲がった釘と真っ直ぐな釘。長い年月、橋を支えてきたんだね。
我が家の私とタクみたいじゃない? どっちも必要でどっちも大事。曲がったほうが私かな?
「記念書き込み整理券」で、平成の架け替えの橋板に名前を書くチャンスをもらえたんだよね。覚えてる? 人混みをすり抜けて、何枚も並ぶ板から私たちの番号「五―四十 横」を見つけた。「ここに名前が残るんだ。」って嬉しかったなぁ。新品の
板に緊張しながら、筆を走らせた9歳、11歳、41歳の三人。今も、この橋のどこかに三人の筆跡が残っちょるね。
懐かしくなって、久しぶりに私とタクの小さい頃のアルバムも見たんよ。ゴロンと仰向けの、オムツ丸出しのムチムチの私、2歳かな。幸せそうに空を眺めてる。
もう1枚は、色付いた紅葉の岩国城を背景に、足を伸ばして座る姉弟、これは年賀状用に撮った写真だったね。それらは、昭和の職人さんが架けた橋の上だった。どれも、リラックスした表情で嬉しそう。岩国っ子じゃね。